ブラック企業が社会問題として取り上げられるようになって、政府も過労死問題などを無視できなくなり、いよいよ厚生労働省によるブラック企業対策が本格化という動きになりましたが、実際のところどこまで有効なのでしょうか?
たしかにブラック企業についての情報は、以前よりも一般層に共有されやすくなっていますし、企業側も「ブラック企業」という単語に敏感になっており、残業なしだったり、積極的な有給休暇取得への働きかけなどを行い、ホワイト企業ぶりをアピールするような流れを感じることも昨今では増えました。
しかし、ブラック企業がなくなったかというと決してそういうわけではありません。
こうしている間にも劣悪な労働環境で心身ともに消耗している人はいますからね。
ブラック企業に対する厚生労働省側の対策に過度な期待は抱かず、まずは自分の身は自分で守ることを意識した方が堅実です。
厚生労働省によるブラック企業対策とは?
厚生労働省は、労働人口が減少する中で若い労働者がブラック企業の食い物にされて、将来を嘱望される貴重な戦力の成長の芽が摘まれるのを防ぐ狙いとして以下の対策を講じました。
厚生労働省のブラック企業対策
- 企業名の公表
- ハローワークへの求人掲載が不可
企業名の公表というのは、いわゆるブラック企業リストと呼ばれるものです。
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また、厚生労働省は、明らかに労働基準法や最低賃金法に違反している企業に対してハローワークの求人に掲載できないという対策を打ち出しています。
労働基準法や最低賃金法違反というのは、法律で定められている範囲をオーバーした長時間労働やサービス残業、給与・残業代の未払いといったものです。
労働基準法や最低賃金法に違反しているブラック企業は、労働基準監督署によって是正指導を受けたり、場合によっては刑事告訴される可能性もあります。
労働基準監督署の指導を受けてブラック企業として認定された企業は、ハローワークへの求人が掲載不可となるわけです。
たしかにハローワークに求人掲載ができなくなれば、ブラック企業に若い労働者が食い物にされる機会が減るという理屈は理解できます。
これまでどのような企業の求人も無条件で掲載しなければならなかったハローワークですが、今回の対策によってブラック企業の求人掲載が不可となったのは一歩前進といえるでしょう。
しかし、これまでハローワークがどんな企業の求人でも無条件で掲載していたなんて驚きました。
まるで無法地帯のようですね?
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働き方改革への期待と影響力
政府は、一億総活躍社会の実現を目指して働き方改革を提唱しています。
参考
働き方改革の実現(首相官邸)
働き方改革の背景には以下の問題が挙げられます。
- 労働人口の減少
- 正社員と非正規の経済格差
- 長時間労働
- 高齢者の就労促進
上記の問題を改善するためには、ブラック企業の存在が邪魔だったりするわけです。
長時間労働およびサービス残業や給与・残業代の未払いなどはブラック企業の特徴でもあるため、働き方改革によって残業時間や正社員と非正規の格差是正、そして高齢者でも安心して働ける社会の実現には期待したくなる人も多いでしょう。
実際に残業を廃止したり、従業員に長時間労働をさせない企業も増えているようです。
たしかにこういったホワイト企業を前面に打ち出した企業が増えていけば、低賃金・長時間労働のブラック企業は肩身が狭くなりますし、ある程度は淘汰されるかも知れません。
しかし、完全にブラック企業がなくなるかといえば、それは難しいようにも思えます。
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ホワイト企業を装うブラック企業はタチが悪い
政府が本格的に対策に取り組んでも、残念なことに完全にブラック企業がこの世の中からなくなることは難しいでしょう。
あくまで厚生労働省が公表するブラック企業は、氷山の一角に過ぎません。
本当にタチが悪いのは、表向きはホワイト企業を装っていて、ブラックなことは裏でやっているという隠れブラック企業だったりしますからね。
サービス残業や長時間労働の実態をうまく隠して、表向きは健全性をアピールしている隠れブラック企業というのは、見分けるのも難しく、本当にタチが悪いと思います。
何か事件が起こらないと、こういったブラック企業の実態が明らかになることはほとんどありません。
また、内部ではブラックでも表面さえホワイトであれば、労基署の是正指導を受けていないのでハローワークにも堂々と求人を掲載できてしまうという現実もあったりするようです。
ごく稀に抜き打ちで調査が入ってブラック企業の実態がバレたり、従業員による内部告発などもありますが、それらは氷山の一角だったりするのが現状です。
内部の情報を流出させないためにブラック企業側も、うまく仕組みを作っていたりしますからね。
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表と裏がまったく違う企業も世の中にはたくさんあります。
そういった企業の情報が共有されることは、ほとんどないので本当にタチが悪いですよね?
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健全な企業の一部の部署がブラック化しているケース
健全なホワイト企業でも一部の部署だけがブラック化しているケースもあったりします。
この場合、企業自体はホワイト企業なので非常に見分けるのが困難です。
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実際に「健全な企業に入社したつもりでも配属された部署がブラックだった」なんて話もよく聞きますからね。
入社した側の人間にとっては、まるで詐欺にあったような気分ではないでしょうか?
しかし、こういった場合、実際にその企業に入社してみないと実態はわからないので、事前に対策することが困難だったりします。
いくら厚生労働省がブラック企業対策に本腰を入れていたとしても、さすがにここまで踏み込むのは困難ですよね?
結局は一部の違法な企業が影響を受けるだけ?
政府によるブラック企業対策ですが、たしかに多少は良い方向に進んではいると思います。
実際にブラック企業の危険性や見分け方などが広く一般的に共有されることによって、被害に遭う人を多少減らすことはできているかも知れません。
しかし、まだまだ現状ではブラック企業が是正されるのは難しそうです。
労働基準監督署や都道府県の労働局も対応が追いついていなかったり、不完全な部分が多々あると思います。
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隠れブラック企業や一部の部署がブラック化している状況までは把握され難い状況で、労働基準監督署や労働局も細かく調査したり、是正するのが難しいですからね。
厚生労働省のブラック企業対策というのは、あきらかに労働基準法および最低賃金法に違反している企業を対象としたものに過ぎないのが現状でしょうか・・・。
今後の動向はどうなるかわかりませんが、現状では結局、一部の違法な企業の名前が公表されたり、ハローワークに求人掲載ができなくなっただけで、ブラック企業自体はまだまだ健在といった印象です。
「もしブラック企業に入社してしまったら、その時はすぐに辞めればいいし…」なんて簡単に考えている人も多いようですが、ブラック企業というのは一度入社したら、なかなか辞められない仕組みになっています。
「会社を辞めたい」と意思表示をしたら、執拗な嫌がらせを受けたといった話もあるくらいですからね。
そんな時は、本人に代わって会社側に退職の意思を伝えてくれる退職代行サービスを利用すると良いでしょう。
ブラック企業の退職も専門業者にかかれば百戦錬磨です。